目次
はじめに
本シリーズは、生徒役のシグマと教師役のオメガの2人の会話で学ぶ高校数学です。
皆さんも、シグマと一緒に高校数学を学んでみませんか?
整式の加法・減法・乗法
整式の四則演算
オメガ「今日は、整式の四則演算について学ぼう」
シグマ「どんどんぱふぱふ」
オメガ「ところでシグマ。前回のおさらいだけど、整式とは何だったかな?」
シグマ「整式は、単項式と多項式の総称のこと」
オメガ「そうだね」
- 単項式の例: \(2a,-3x^2y,1\)
- 多項式の例: \(2a-3x^2y+1\)
- 整式 の例: \(2a,-3x^2y,1,2a-3x^2y+1\)
シグマ「四則演算って、足す、引く、掛ける、割るのことでしょ?」
オメガ「その通り。加減乗除と呼ばれることもあるね。このうち、除法は数学2で学ぶ内容だから、ここでは加法、減法、乗法について学ぶよ」
シグマ「ラジャー」
整式の加法と減法
オメガ「まずは整式の加法と減法について。実際の例で見てみよう」
\(A=3x^2+2x-3, B=2x^2-1\) のとき、 和 \(A+B\) と 差 \(A-B\) を求めよ。
シグマ「やってみる」
- 和(加法)
\(A+B\)
\(=(3x^2+2x-3)+(2x^2-1)\)
\(=5x^2+2x-4\) - 差(減法)
\(A-B\)
\(=(3x^2+2x-3)-(2x^2-1)\)
\(=x^2+2x-2\)
シグマ「できた! 合ってる?」
オメガ「合っているよ」
シグマ「整式の加法と減法って、つまりは同類項をまとめているだけなんだね」
オメガ「そういうこと。簡単でしょ?」
単項式の乗法
シグマ「次は整式の乗法だよね」
\(A×B\)
\(=(3x^2+2x-3)(2x^2-1)\)
オメガ「ごめん。その前に、まずは単項式の乗法について話をしていいかな」
シグマ「うん」
- 累乗
\(a^n\) のことを一般に \(a\) の累乗という。 - 指数
\(a^n\) の \(n\) のことを指数という。
シグマ「1乗、2乗、3乗、4乗とかのことをまとめて累乗と呼ぶということ?」
オメガ「その通り。ちなみに、2乗は平方、3乗は立方と呼ぶこともあるよ」
シグマ「平方センチメートルや平方根の平方だよね」
オメガ「そうそう。では、累乗の計算問題を出すよ」
\(a^3×a^2\)は?
シグマ「\(a^6\)! と言うとでも思ったでしょう? 答えは \(a^5\)!」
オメガ「どうしてそう思うの?」
シグマ「中学でそう習ったから」
オメガ「…………」
シグマ「(ドヤァ)」
オメガ「…………」
シグマ「…………」
オメガ「まあ呆れていても先に進まないね。あのね……、HowだけでなくWhyをわたしたちは大切にしよう」
- How
どうやって解くか? - Why
どうしてその方法で解けるのか?
どうしてそのように考えるのか?
シグマ「Whyを大切にする……」
オメガ「どうしてだと思う?」
シグマ「理由まで分かった方が、より深い理解に繋がるから……?」
オメガ「それも理由の一つだと思うよ」
シグマ「オメガはどうしてだと思うの?」
オメガ「うーん……。シグマ自身にもっと考えてほしいから、今は内緒で。ごめんね」
シグマ「……分かったよ」
シグマはノートに、HowだけでなくWhyを大切にしようと書いた。
オメガ「話を戻そう」
\(a^3×a^2\)は?
シグマ「なぜ掛け算なのに、 3+2=5 と考えるか」
オメガ「シグマにまた一つ合言葉を教えるね」
シグマ「うん」
オメガ「定義に立ち返ろう」
シグマ「定義……?」
オメガ「定義とは、その用語の意味、その用語のスタート地点のことだと思っていいよ」
シグマ「その用語のスタート地点に戻ろうということ?」
オメガ「そうだね。 \(a^3\) の定義は何だろう?」
シグマ「 \(a^3\) は \(a\) を3回掛けたもの」
オメガ「合っているよ」
つまり、 \(a^3=a×a×a\)
同様に、 \(a^2=a×a\)
オメガ「そうすると、 \(a^3×a^2\) というのは……」
シグマ「分かった! こうでしょ」
\(a^3×a^2\)
\(=a×a×a×a×a\)
\(=a^5\)
オメガ「素晴らしい」
シグマ「こうやって書いてみると、3個のaの積と2個のaの積を掛けるんだから、5個のaの積になるのは当たり前だなあ。どうして分からなかったんだろ」
オメガ「今回のように定義に帰ることで、気付きを得ることは多いよ」
シグマ「なるほど」
オメガ「では次の問題」
\((a^3)^2\)は?
シグマ「3×2で、答えは \(a^6\) だと知ってるけど、どうしてそうなるか考えてみるよ」
\((a^3)^2\)
\(=a^3×a^3\)
\(=a^6\)
シグマ「出来た!」
オメガ「正解〜。ここまでの内容を一般化するね」
\(m,n\) を正の整数とする。
- \(a^m×a^n=a^{m+n}\)
例:\(a^3×a^2=a^5\)
\(a^6\) と間違えないように注意! - \((a^m)^n=a^{mn}\)
例:\((a^3)^2=a^6\)
\(a^9\) と間違えないように注意! - \((ab)^n=a^nb^n\)
例:\((ab)^3=a^3b^3\)
シグマ「3つ目も簡単に証明できる!」
オメガ「そうだね。これら3つのことを指数法則と呼ぶよ」
整式の乗法
オメガ「指数の計算についても説明したし、整式の乗法の話に戻ろうね」
シグマ「了解!」
オメガ「整式の乗法では分配法則を用いるよ」

シグマ「諦めて手書きにしたんだね」
オメガ「メタな発言はさておき……。分配という名前の通り、各項に掛け算を分配しているよ」
シグマ「うん」
オメガ「上の分配法則を使って、 \((A+B)(C+D)\) を計算することができるかな?」
シグマ「 \(AC+AD+BC+BD\) になることを知っているけど、これもなぜか考えてみるね」
オメガ「ファイト!」
シグマ「うーん……。 \((A+B)(C+D)\) は2つの分配法則の合体バージョンっぽいんだよな」
オメガ「そうだね。ヒントは二つの分配法則を順番に使っていけばいいよ」
シグマ「順番に……」
シグマはノートに数式を書いていった。

シグマ「できた!」
オメガ「すごい! 正解♪」
シグマ「分配法則を用いることで、整式と整式の積が計算できるんだね」
オメガ「そうそう。今回は分配法則を順番に使って丁寧に計算したけど、実際は次のように計算するよ」

シグマ「前の整式の項と後ろの整式の項のペアで掛け算して、項を作っていく感じだね」
オメガ「そうそう。ちなみにこのような計算を、式の展開とも呼ぶよ」
シグマ「括弧を開いている感じだからかな?」
オメガ「そんな感じかな。最後に次の問題をやって今日は終わろうね」
\(A=3x^2+2x-3, B=2x^2-1\) のとき、 積 \(AB\) を求めよ。
シグマ「そうだ、この問題を考えていたんだった」
オメガ「もうできるでしょう?」
シグマ「うん」
- 積(乗法)
\(AB\)
\(=(3x^2+2x-3)(2x^2-1)\)
\(=6x^4-3x^2+4x^3-2x-6x^2+3\)
\(=6x^4+4x^3-9x^2-2x+3\)
オメガ「正解〜。基本的な計算問題だけど、この中にこれまで学んできた分配法則・指数法則・同類項をまとめる・降べきの順に整理するといった内容が出てきているね」
シグマ「一つ一つの積み重ねということか」
オメガ「そうだね。今日はここまでにしよう。次回は、式の展開(整式の乗法)について、もう少し掘り下げていくよ!」
シグマ「では、またね」
最後に
今回は以下のことを学びました。
- 整式の加法・減法はただ同類項をまとめているだけ
- 指数法則
- 整式の乗法は分配法則を使う
それから、「HowだけでなくWhyを大切にしよう」「定義に立ち返ろう」といった合言葉も出てきました。
みなさんはなぜ、Whyを大切にする必要があると考えますか? ぜひ、自分なりに言語化してみてください。
数学の内容だけでなく、学ぶうえでのこころのようなものも、折に触れ、伝えていければ。
では、次回もまた会えると嬉しいです!
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