数学1 数と式5 因数分解の基本

はじめに

本シリーズは、生徒役のシグマと教師役のオメガの2人の会話で学ぶ高校数学です。

皆さんも、シグマと一緒に高校数学を学んでみませんか?

因数分解の基本

因数分解とは何か

オメガ「今日は、因数分解について学ぼう」

シグマ「どんどんぱふぱふ」

オメガ「因数分解は3回に分けて学ぶよ。今回は基本編」

シグマ「頑張るぞー!」

オメガ「因数分解は中学でも学習したね?」

シグマ「うん。 \(x^2+x-2=(x+2)(x-1)\) みたいな計算だよね?」

オメガ「そうそう。因数分解とは何か説明できる?」

シグマ「何か?って聞かれてもなあ……。式の展開の反対?」

オメガ「そうだね」

\((x+2)(x-1)=x^2+x-2\) は式の展開。項の積を項の和の形にする。
\(x^2+x-2=(x+2)(x-1)\) は因数分解。項の和を項の積の形にする。

オメガ「因数分解について、より正確に定義しておくね」

因数分解とは、整式をいくつかの整式(因数と呼ぶ)の積の形に分解することである。ただし、因数は1次以上であり、かつ、これ以上分解できないものとする。

シグマ「要は積の形に出来るだけ分解したらいいってことでしょ?」

オメガ「その理解でいいよ。ところで、因数分解って何のために学ぶんだろう? 式の展開は、整式と整式の掛け算として必要だよね。ならその反対の因数分解は?」

シグマ「\(x^2+x-2=(x+2)(x-1)\) とすることのメリット……」

オメガ「考えてみて?」

シグマ「…………思い付かないや」

オメガ「例えば、2次方程式を考えてみるといいよ」

2次方程式 \(x^2+x-2=0\) を解け。

シグマ「そっか! 2次方程式を解くのに因数分解を使う!」

\(x^2+x-2=0\)
\((x+2)(x-1)=0\)
よって、\(x=-2,1\)

オメガ「そうだね。ちなみに2行目から3行目はどうしてだっけ?」

シグマ「どうしてって、そのまんまじゃん」

オメガ「そのまんまの部分をちゃんと説明できる?」

シグマ「\(x+2\) だから -2 が解に出てきて、 \(x-1\) だから 1 が解に出てくる」

オメガ「分かっているのかいないのか、分からない説明だなあ」

シグマ「ぐぬぬ」

オメガ「2つの数があって、その2つの数をかけると 0 になったとするね。その2つの数について、何かわかることはあるかな?」

シグマ「2つの数のどちらかは 0 になる!」

オメガ「そうだね。 \((x+2)(x-1)=0\) について同じように考えると……?」

シグマ「\(x+2\) と \(x-1\) のどちらかは 0 になる!」

オメガ「そういうこと」

\(x^2+x-2=0\)
\((x+2)(x-1)=0\)
\(x+2=0\) 、または、 \(x-1=0\)
よって、 \(x=-2,1\)

シグマ「そういうことだったのか……!」

オメガ「どうして、因数分解が大切なのか、その本質が見えてこない?」

シグマ「\(x^2+x-2=0\) はそのままの形だと解くのが難しいけど、 \(x+2=0\) や \(x-1=0\) なら解ける。因数分解をすることで、簡単な問題に分解してるんだ!」

オメガ「そうだね。整式は次数が低いもののほうが簡単に扱える。2次式より1次式」

シグマ「なるほど」

中学レベルの因数分解

オメガ「それじゃ、因数分解の問題を実際に見ていこうか」

(1) \(x^2-6x\)
(2) \(x^2-6x-16\)
(3) \(x^2-6x+9\)
(4) \(x^2-16\)

シグマ「これくらいなら出来るよ!」

(1) 共通因数があればくくる
\(x^2-6x\)
\(=x(x-6)\)

(2) 足して-6、かけて-16の2数は、2と-8
\(x^2-6x-16\)
\(=(x+2)(x-8)\)

(3) \(a^2±2ab+b^2=(a±b)^2\) の利用
\(x^2-6x+9\)
\(=(x-3)^2\)

(4) \(a^2-b^2=(a+b)(a-b)\) の利用
\(x^2-16\)
\(=(x+4)(x-4)\)

オメガ「すべて正解だね! さすが」

シグマ「やったぜ」

オメガ「では次の問題!」

シグマ「どんとこい」

(5) \(x^3y-4xy^3\)

シグマ「……なんか急に難しくなってない?」

オメガ「(1)〜(4)までの問題のテクニックで解けるよ」

シグマ「そっか! 共通因数」

\(x^3y-4xy^3\)
\(=xy(x^2-4y^2)\)

オメガ「因数分解の問題でまず真っ先にするべきことは、共通因数でくくれればくくるなんだ。そのことを忘れないでね」

シグマ「分かったよ」

オメガ「ところでこの問題、まだ因数分解できるんだよね」

シグマ「???」

オメガ「因数分解はこれ以上分解できない単位にまで分解する必要がある」

シグマ「あー、なるほど。 \(x^2-4y^2\) の部分か」

\(x^3y-4xy^3\)
\(=xy(x^2-4y^2)\)
\(=xy(x+2y)(x-2y)\)

オメガ「そうそう。そこまで出来て正解だよ」

3次式の因数分解

オメガ「ではでは次の問題! ここから高校レベルに入っていくよ」

(6) \(x^3+8\)
(7) \(x^3-64\)
(8) \(x^3-64x\)

シグマ「3乗がいっぱいだ……」

オメガ「そうだね。どうやって考えよう? 確か3乗について最近どこかで見かけたような……」

シグマ「式の展開!!」

オメガ「ふむ」

シグマ「因数分解は式の展開の反対だった」

オメガ「ふむふむ」

シグマ「展開公式が増えたなら、因数分解公式が増えたとも言える!」

オメガ「素晴らしい!」

展開公式
  1. \((a+b)^2=a^2+2ab+b^2\)(2乗の公式)
  2. \((a-b)^2=a^2-2ab+b^2\)(2乗の公式)
  3. \((a+b)(a-b)=a^2-b^2\)(和と差の積の公式)
  4. \((a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\)(3乗の公式)
  5. \((a-b)^3=a^3-3a^2b+3ab^2-b^3\)(3乗の公式)
  6. \((a+b)(a^2-ab+b^2)=a^3+b^3\)
  7. \((a-b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3\)
  8. \((a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca\)

因数分解公式

  1. \(a^2+2ab+b^2=(a+b)^2\)(2乗の公式)
  2. \(a^2-2ab+b^2=(a-b)^2\)(2乗の公式)
  3. \(a^2-b^2=(a+b)(a-b)\)(和と差の積の公式)
  4. \(a^3+3a^2b+3ab^2+b^3=(a+b)^3\)(3乗の公式)
  5. \(a^3-3a^2b+3ab^2-b^3=(a-b)^3\)(3乗の公式)
  6. \(a^3+b^3=(a+b)(a^2-ab+b^2)\)
  7. \(a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)\)
  8. \(a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca=(a+b+c)^2\)

オメガ「さて、(5) \(x^3+8\) はどの公式を使うでしょうか」

シグマ「6番の公式!」

\(x^3+8\)
\(=x^3+2^3\)
\(=(x+2)(x^2-2x+4)\)
※公式における \(a\) が \(x\) で \(b\) が 2

オメガ「正解!」

シグマ「(6) \(x^3-64\) は7番の公式だね」

\(x^3-64\)
\(=x^3-4^3\)
\(=(x-4)(x^2+4x+16)\)
※公式における \(a\) が \(x\) で \(b\) が 4

オメガ「合っているよ。では、(7) \(x^3-64x\) は?」

シグマ「同じ手には二度乗らないよ!」

\(x^3-64x\)
\(=x(x^2-64)\)
\(=x(x+8)(x-8)\)

シグマ「因数分解の問題でまず真っ先にするべきことは、共通因数でくくれればくくる!」

オメガ「素晴らしい。着実に成長してるね!」

シグマ「えへへ」

オメガ「1番〜3番の公式は当然重要として、次に覚えておくべきなのは、今回使った6番と7番だよ。残りの4番、5番、8番は因数分解の問題としてはそこまで頻出でないし、後に学ぶ他の方法で解けるからね」

(※4番、5番は数IIで学ぶ因数定理を用いて因数分解すればOK。8番は次回記事参照。)

たすき掛けの因数分解

(9) \(2x^2+7x+5\)
(10) \(2x^2+7x-4\)
(11) \(2x^2-11x+5\)
(12) \(2x^2-7x-15\)

オメガ「さて、本日ラスト4問だよ」

シグマ「なんかまた似たような問題が並んでいるなあ」

オメガ「そうだね。まずは(9)から考えよう。どうやって考えるかだけど、この問題はね、因数分解すると、 \((ax+b)(cx+d)\) といった形になるよ」

シグマ「2次式が1次式と1次式に分解されているってことだよね」

オメガ「そうそう。あとは、 \(a,b,c,d\) の正体が分かればいい。まずは、 \(a,b,c,d\) が満たすべき条件について考えよう」

シグマ「条件?」

\(2x^2+7x+5=(ax+b)(cx+d)\)

オメガ「左辺の \(2x^2\) は、右辺のどこから生まれていると思う?」

シグマ「 \(ax\) と \(cx\) がかけられて生まれている」

オメガ「そうだね。つまり \(a\) と \(c\) はかけて2にならないといけないことが分かる」

シグマ「なるほど」

オメガ「次に、左辺の5は、右辺のどこから生まれているかな?」

シグマ「\(b\) と \(d\) がかけられて生まれている。つまり \(b\) と \(d\) はかけて5にならないといけない」

オメガ「その通り。では、左辺の \(7x\) は、右辺のどこから生まれているかな?」

シグマ「えーっと、 \(ax\) と \(d\) がかけられているのと、\(b\) と \(cx\) がかけられているのと、その2つから生まれている」

オメガ「そうだね。つまり?」

シグマ「 \(a×d\) と \(b×c\) を足して7にならないといけない」

オメガ「そうそう。これまでに分かった \(a,b,c,d\) の条件をまとめてみて?」

シグマ「らじゃー」

  1. \(ac=2\)
  2. \(bd=5\)
  3. \(ad+bc=7\)

オメガ「これで \(a,b,c,d\) が満たすべき条件は分かった。あとは正体を突き止めるだけだよ。条件を満たす \(a,b,c,d\) を頑張って探してみて?」

シグマの計算
①から、 \(a=1, c=2\) としてみよう。
②から、 \(b=5, d=1\) としてみよう。
このとき、 \(ad+bc=11\) となってしまい、③を満たさない。

シグマ「だめだ……」

オメガ「間違えてもいいから、色々な組み合わせを試してみるといいよ」

シグマの計算2
①から、 \(a=1, c=2\) としてみよう。
②から、 \(b=1, d=5\) としてみよう。
このとき、 \(ad+bc=7\) となり、③も満たす。

シグマ「 \(a=1, b=1, c=2, d=5\) だ!」

オメガ「正解〜。つまり因数分解の答えは?」

\(2x^2+7x+5=(x+1)(2x+5)\)

オメガ「これで無事、因数分解できたね」

シグマ「きつすぎる……」

オメガ「そうだね。初めはきついと思う。でも慣れてくると素早く計算できるようになるよ。大切なのは、間違えてもいいから、色んな組み合わせをどんどん試してみることだね」

シグマ「練習あるのみってことかあ」

オメガ「 \(a,b,c,d\) を探すには、次のような図を描いて考えるといいよ」

オメガ「見方わかるかな?」

シグマ「赤の部分が \(a\) と \(c\) で、青の部分が \(b\) と \(d\) 」

オメガ「そうそう。まず赤の部分と青の部分を埋めてみて、 \(ad+bc=7\) になっているかどうかを緑の部分で確かめるんだよ」

シグマ「なるほど。これを使って、残りの問題もやってみるよ」

(10) \(2x^2+7x-4\)

(11) \(2x^2-11x+5\)

(12) \(2x^2-7x-15\)

シグマ「できたーーー!」

オメガ「お疲れ様! 少し慣れてきたかな」

シグマ「少しは……」

オメガ「とにかく練習あるのみだね! ちなみにこのタイプの問題を、たすき掛けの因数分解と呼ぶよ」

シグマ「たすき掛けの因数分解……。次回までに素早く計算できるようになっておくよ!」

オメガ「お、いいねー。では、今日はここまで」

シグマ「また会おうね」

最後に

今回は因数分解の1回目ということで、以下の問題を取り扱いました。

(1) \(x^2-6x\)
(2) \(x^2-6x-16\)
(3) \(x^2-6x+9\)
(4) \(x^2-16\)
(5) \(x^3y-4xy^3\)
(6) \(x^3+8\)
(7) \(x^3-64\)
(8) \(x^3-64x\)
(9) \(2x^2+7x+5=0\)
(10) \(2x^2+7x-4=0\)
(11) \(2x^2-11x+5\)
(12) \(2x^2-7x-15=0\)

このあたりはオメガやシグマの言うように、練習あるのみですね。

高校数学の基礎となる計算ですので、素早く確実に計算できるように、しっかり練習することが大切です。

では、次回もまた会えると嬉しいです!

本シリーズの記事はこちら

    コメントを書く