創作パズル 嘘つきは悪い子

はじめに

てくますプロジェクトのChihiroです!
この記事では、オリジナルの論理パズルを紹介します。

本記事は、数学・情報・論理パズルを楽しむ Techmath Project Advent Calendar 2024 の24日目の記事でもあります。
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前回のパズル「プレゼント交換パズル」の解答を公開しました!
まだ解いていない人はぜひ挑戦してみてください!

みなさんは良い子にしていますか?
嘘をついたりする悪い子は、サンタさんからプレゼントをもらえなくなってしまいますよ!
論理パズルにも嘘をつく悪い子が登場することがありますが、発言が彼らの推理であるときはどのようなことになるのでしょうか?

考えてみよう

問題

アキラ,カオル,サツキ,タクミ,ナギサの5人のうち、4人は嘘をつかない良い子なのですが、1人はいつも嘘をつく悪い子で、誰が悪い子なのかはわかりません。
良い子の4人はサンタさんからクッキー,チョコレート,キャンディー,ドーナツのうち異なるお菓子を1つずつプレゼントされ、何をもらったか自分だけ知っています。
5人は十分に賢く、前提の情報とそれまでの発言だけをもとに推理して、次の順に話しました。

アキラ「この人がクッキーをもらっているかわかった」
カオル「この人がチョコレートをもらっているかわかった」
サツキ「この人がキャンディーをもらっているかわかった」
タクミ「全員が何をもらったかわかった」
ナギサ「全員が何をもらったかわかった」
アキラ,カオル,サツキだけは自分以外の誰かを指さして発言しています。

ドーナツをもらった人がクッキーをもらっていない人を指さしているとき、5人はそれぞれ何をもらったでしょうか?

登場人物の推理を推理するパズルでは、嘘つきは「〇〇だったかどうか」ではなく「〇〇だとわかったかどうか」の嘘をつきます。
推理の結果ではなく推理できたかどうかに嘘があるので、気を付けましょう。
そもそも、今回のパズルの発言は推理の結果から得られる情報が全くないのですが……

誰が嘘をついているのかどころか、はじめの3人が誰を指さしているのかすら私たちにはわかりませんが、登場人物の推理を推理していけば答えにたどり着くことができます。
では、解いてみましょう!














解答

アキラ…クッキー
カオル…チョコレート
サツキ…ドーナツ
タクミ…何ももらっていない
ナギサ…キャンディー

解説

まず、アキラの推理を推理しましょう。

アキラがクッキーをもらっている場合は、アキラは指さした人がクッキーをもらっていないとわかるので、アキラの推理を言うことができます。
アキラがクッキー以外をもらっている場合は、アキラは指さした人がクッキーをもらっているかわからないので、アキラの推理を言うことができません。
アキラが何ももらっていない場合は、アキラは指さした人がクッキーをもらっているかわからないので、アキラの推理を嘘として言うことができます。
よって、アキラはクッキーをもらったか何ももらっていないことがわかり、以降の人にもこの情報が伝わります。

次に、カオルの推理を推理しましょう。
アキラと同じようなことを言っていますが、全く同じような考察ができるでしょうか?
今回は、カオルにアキラの情報が少しあるので、カオルがアキラを指さしているかどうかで考察は異なります。

カオルがアキラを指さしていて何かをもらっている場合は、カオルはアキラの情報によりアキラがチョコレートをもらっていないとわかるので、カオルの推理を言うことができます。
カオルがアキラを指さしていて何ももらっていない場合は、カオルはアキラの情報によりアキラがチョコレートをもらっていないとわかるので、カオルの推理を正直に言うことができません。
よって、カオルがアキラを指さしているときは、カオルは何かをもらっていることがわかり、以降の人にもこの情報が伝わります。

カオルがアキラ以外を指さしていてチョコレートをもらっている場合は、カオルは指さした人がチョコレートをもらっていないとわかるので、カオルの推理を言うことができます。
カオルがアキラ以外を指さしていてチョコレート以外をもらっている場合は、カオルは指さした人がチョコレートをもらっているかわからないので、カオルの推理を言うことができません。
カオルがアキラ以外を指さしていて何ももらっていない場合は、カオルは指さした人がチョコレートをもらっているかわからないので、カオルの推理を嘘として言うことができます。
よって、カオルがアキラ以外を指さしているときは、カオルはチョコレートをもらったか何ももらっていないことがわかり、以降の人にもこの情報が伝わります。

では、サツキの推理を推理しましょう。
アキラの出している「クッキーをもらったか何ももらっていない」のような2択以下にしている情報を強い情報と呼ぶことにしましょう。
カオルのときのように、サツキが強い情報を出している人を指さしているかどうかで考察が異なります。

サツキがアキラか”アキラ以外を指さしているカオル”を指さしているときは、サツキは何かをもらっていることがわかり、以降の人にもこの情報が伝わります。
サツキが”アキラを指さしているカオル”かタクミかナギサを指さしているときは、サツキはキャンディーをもらったか何ももらっていないことがわかり、以降の人にもこの情報が伝わります。

そして、タクミとナギサの推理を推理しましょう。

カオルもサツキも強い情報を出している場合を考察しましょう。
タクミがドーナツをもらっている場合は、タクミにはアキラがクッキーをもらっている可能性も何ももらっていない可能性もあるので、タクミの推理を言うことができません。
タクミがドーナツ以外の何かをもらっている場合は、例えばクッキーをもらっている場合は、タクミにはタクミ,カオル,サツキ,ナギサがそれぞれクッキー,チョコレート,キャンディー,ドーナツをもらったとわかるので、タクミの推理を言うことができます。
タクミが何ももらっていない場合は、タクミにはアキラ,カオル,サツキ,ナギサがそれぞれクッキー,チョコレート,キャンディー,ドーナツをもらったとわかるので、タクミの推理を正直に言うことができません。
よって、ナギサは必ずドーナツをもらっていて、タクミがドーナツ以外の何かをもらっていることになるわけですが、ナギサにはタクミが何をもらっているかわからないので、ナギサの推理を言うことができません。

カオルが強い情報を出していてサツキが強い情報を出していない場合を考察しましょう。
タクミがクッキーかチョコレートをもらっている場合は、タクミにはサツキがキャンディーをもらっている可能性もドーナツをもらっている可能性もあるので、タクミの推理を言うことができません。
タクミがキャンディーかドーナツをもらっている場合は、タクミにはアキラがクッキーをもらっている可能性も何ももらっていない可能性もあるので、タクミの推理を言うことができません。
タクミが何ももらっていない場合は、タクミにはサツキがキャンディーをもらっている可能性もドーナツをもらっている可能性もあるので、タクミの推理を嘘として言うことができます。
よって、アキラはクッキー,カオルはチョコレートを必ずもらっていて、タクミは何ももらっていないことになるので、ナギサはナギサの推理を言うことができます。

カオルが強い情報を出していなくてサツキが強い情報を出している場合を考察しましょう。
タクミがクッキーかキャンディーをもらっている場合は、タクミにはカオルがチョコレートをもらっている可能性もドーナツをもらっている可能性もあるので、タクミの推理を言うことができません。
タクミがチョコレートかドーナツをもらっている場合は、タクミにはアキラがクッキーをもらっている可能性も何ももらっていない可能性もあるので、タクミの推理を言うことができません。
タクミが何ももらっていない場合は、タクミにはカオルがチョコレートをもらっている可能性もドーナツをもらっている可能性もあるので、タクミの推理を嘘として言うことができます。
よって、アキラはクッキー,サツキはキャンディーを必ずもらっていて、タクミは何ももらっていないことになるので、ナギサはナギサの推理を言うことができます。

カオルもサツキも強い情報を出していない場合を考察しましょう。
タクミがクッキーをもらっている場合は、タクミにはカオルがキャンディーをもらっている可能性もチョコレートをもらっている可能性もあるので、タクミの推理を言うことができません。
タクミがクッキー以外の何かをもらっている場合は、タクミにはアキラがクッキーをもらっている可能性も何ももらっていない可能性もあるので、タクミの推理を言うことができません。
タクミが何ももらっていない場合は、タクミにはカオルがチョコレートをもらっている可能性もキャンディーをもらっている可能性もあるので、タクミの推理を嘘として言うことができます。
よって、アキラはクッキーを必ずもらっていて、タクミは何ももらっていないことになるわけですが、ナギサにはカオルとサツキが何をもらっているかわからないので、ナギサの推理を言うことができません。

最後に、「ドーナツをもらった人がクッキーをもらっていない人を指さしている」を使って答えを絞りましょう。

今までの考察で、「アキラがクッキーをもらっていて,カオルがアキラ以外を指さしてチョコレートをもらっていて,サツキがアキラかカオルを指さしてキャンディーかドーナツをもらっていて,タクミが何ももらっていなくて,ナギサがキャンディーかドーナツをもらっている」か「アキラがクッキーをもらっていて,カオルがアキラを指さしてチョコレートかドーナツをもらっていて,サツキがアキラ以外を指さしてキャンディーをもらっていて,タクミが何ももらっていなくて,ナギサがチョコレートかドーナツをもらっている」のうちのどれかだとわかります。

ドーナツをもらっている人が指さすためには、前者の場合ではサツキがドーナツをもらっている必要があり,後者の場合ではカオルがドーナツをもらっている必要があります。
前者のサツキはチョコレートをもらっているカオルを指さしている場合がありますが、後者のカオルはクッキーをもらっているアキラを指さしている場合しかありません。
よって、前者の「アキラがクッキーをもらっていて,カオルがアキラ以外を指さしてチョコレートをもらっていて,サツキがカオルを指さしてドーナツをもらっていて,タクミが何ももらっていなくて,ナギサがキャンディーをもらっている」のみがすべての条件をみたします。

最後に

論理パズルではよく、良くない目にあった人が嘘をついてしまうという設定があります。
しかし、このパズルのサンタさんは、嘘をつくような悪い子だからプレゼントをあげないのです。

プレゼントをもらえなかったから嘘をつくのか、嘘をつくからプレゼントをもらえないのか……

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