方程式 a+b+c+ab+bc+ca=abc

はじめに

今回は大学入試でもしばしば見かける不定方程式の整数解に関する問題を解いていきましょう。

問題

解説

(1) \(a+b=ab\)

方程式の整数解を求める問題のポイントは、解の候補を有限個にすることです。

そのための代表的な方法は次の2つです。

  1. ( ) × ( ) = 整数 の形を作る
    整数問題は積の形を作ることで上手く解ける問題が多いです。
    例えば、足して10になる2つの整数は無数に存在しますが、かけて10になる2つの整数は4種類しか存在しません。
    和の形ではなく、積の形にすることで、解の候補を有限個にするというわけです。
  2. 不等式で値の範囲を絞り込む
    何とかして、\(a\) が3以上になることはあり得ないことが証明できたならば、\(a\)が1の場合と2の場合のみ、調べれば良いことになります。このように、不等式で解の候補を有限個に絞りこむ手法です。

(1)をそれぞれの方法で解いてみましょう。

解法1 ( ) × ( ) = 整数 の形を作る

解答

\(a+b=ab\)
\(ab-a-b=0\)
\(ab-a-b+1-1=0\)
\((a-1)(b-1)=1\)
\(a-1 \geq 0, b-1 \geq 0\) なので, \((a-1,b-1)=(1,1)\)
つまり, \((a,b)=(2,2)\)

補足

( ) × ( ) = 整数 の形を作るために、3行目で+1を生み出しています。
このようにすることで、\(ab-a-b+1\) の部分を因数分解できます。
-1は+1を生み出したことの辻褄合わせです。

4行目で無事、( ) × ( ) = 整数 の形を作れました。
かけて1になる2数は、(-1,-1)か(1,1)しかありませんので、後はそれらを調べれば終わりです。

無理やり因数分解して、積の形を作る部分は、慣れが必要かも知れません。

解法2 不等式で値の範囲を絞り込む

解答

\(a \leq b\) のため, \(a+b \leq b+b\)
\(a+b = ab\) であり, \(b+b = 2b\) なので,
\(ab \leq 2b\) と書き換えられる.
ここで, \(b\) は正の数より, 両辺を \(b\) で割って, \(a \leq 2\)
よって, \(a=1,2\)
\(a=1\) のとき, \(1+b = b\) より不適.
\(a=2\) のとき, \(2+b = 2b\) より \(b = 2\)
つまり, \((a,b)=(2,2)\)

補足

\(a+b \leq b+b\) の部分がポイントです。
\(a\) を \(b\) に書き換えることで、文字を減らしつつ、不等式の形に持ち込めています。

この部分が難しければ、
\(a+b = ab\) の式を、\(b = \displaystyle\frac{a}{a-1}\) にいったん変形し、
\(a \leq b\) のため, \(a \leq \displaystyle\frac{a}{a-1}\) としてもよいです。
この不等式からでも, \(a \leq 2\) を導くことができます。

\(a \leq 2\) さえ得られれば、こちらのもの。
後は \(a=1\) のときと \(a=2\) のときを調べれば終わりです。

なお、面倒臭くはありますが、
(\(a \geq 2\) かつ \(b \geq 3\)) または (\(a \geq 3\) かつ \(b \geq 2\)) ならば,
\(a+b \geq ab\) となってしまうことを数学的帰納法で示す方法もあるでしょう。

(2) \(a+b+c=abc\)

(2)以降の問題は、( ) × ( ) = 整数 の形を作る方針では厳しいです。
不等式で値の範囲を絞り込む方針でいきましょう。

解答

\(a \leq b \leq c\) のため, \(a+b+c \leq c+c+c\)
\(a+b+c = abc\) であり, \(c+c+c = 3c\) なので,
\(abc \leq 3c\) と書き換えられる.
ここで, \(c\) は正の数より, 両辺を \(c\) で割って, \(ab \leq 3\)
よって, \((a,b)=(1,1),(1,2),(1,3)\)
\((a,b)=(1,1)\) のとき, \(2+c = c\) より不適.
\((a,b)=(1,2)\) のとき, \(3+c = 2c\) より \(c = 3\)
\((a,b)=(1,3)\) のとき, \(4+c = 3c\) より \(c = 2\)
\(a \leq b \leq c\) なので, \((a,b,c)=(1,2,3)\)

(3) \(ab+bc+ca=abc\)

解答

\(a \leq b \leq c\) のため, \(ab+bc+ca \leq bc+bc+bc\)
\(ab+bc+ca = abc\) であり, \(bc+bc+bc = 3bc\) なので,
\(abc \leq 3bc\) と書き換えられる.
ここで, \(bc\) は正の数より, 両辺を \(bc\) で割って, \(a \leq 3\)
よって, \(a=1,2,3\)

(i) \(a=1\) のとき
 \(b+bc+c = bc\)
 \(b+c = 0\)
 \(b,c\) は正の数より不適.

(ii) \(a=2\) のとき
 \(2b+bc+2c = 2bc\)
 \(bc-2b-2c = 0\)
 \((b-2)(c-2) = 4\)
 \(b-2 \geq -1, c-2 \geq -1, b-2 \leq c-2 \) なので, \((b-2,c-2)=(1,4), (2,2)\)
 つまり, \((b,c)=(3,6), (4,4)\)

(iii) \(a=3\) のとき
 \(3b+bc+3c = 3bc\)
 \(2bc-3b-3c = 0\)
 \((2b-3)(c-\displaystyle\frac{3}{2}) = \displaystyle\frac{9}{2}\)
 \((2b-3)(2c-3) = 9\)
 \(2b-3 \geq -1, 2c-3 \geq -1, 2b-3 \leq 2c-3\) なので, \((2b-3,2c-3)=(1,9), (3,3)\)
 つまり, \((b,c)=(2,6), (3,3)\)

\(a \leq b \leq c\) なので, (i)〜(iii)より, \((a,b,c)=(2,3,6), (2,4,4), (3,3,3)\)

補足

\(ab+bc+ca \leq c^2+c^2+c^2\) とすると、
\(abc \leq 3c^2\)
\(ab \leq 3c\)
となり、右辺に \(c\) が残ってしまうことに注意。

(4) \(a+b+c+ab+bc+ca=abc\)

\(a \leq b \leq c\) のため、
\(a+b+c+ab+bc+ca \leq 6bc\)
よって、 \(abc \leq 6bc\)
\(a \leq 6 \) とすることで、大変ですが解くことができます。

すべての \(a\) を調べなければならないのと、\(a \leq 6 \)の範囲のみ調べればよいのとでは、雲泥の差です。 候補を有限個に減らせている時点で勝ちと言ってよいでしょう。

しかし折角ですので、もっと \(a\) の範囲を減らそうと思います。

解答

\(a+b+c+ab+bc+ca=abc\) の両辺を \(abc\) で割る.

\(\displaystyle\frac{1}{bc}+\displaystyle\frac{1}{ca}+\displaystyle\frac{1}{ab} + \displaystyle\frac{1}{c}+\displaystyle\frac{1}{a}+\displaystyle\frac{1}{b}=1\)

\(a \leq b \leq c\) のため, \(\displaystyle\frac{1}{c}\leq\displaystyle\frac{1}{b}\leq\displaystyle\frac{1}{a}\)

よって, \(\displaystyle\frac{1}{bc}+\displaystyle\frac{1}{ca}+\displaystyle\frac{1}{ab} + \displaystyle\frac{1}{c}+\displaystyle\frac{1}{a}+\displaystyle\frac{1}{b} \leq \displaystyle\frac{3}{a^2} + \displaystyle\frac{3}{a}\)

つまり, \(1 \leq \displaystyle\frac{3}{a^2}+ \displaystyle\frac{3}{a}\)

変形して, \(a^2-3a-3 \leq 0\)

2次不等式を解いて, \(\displaystyle\frac{3-\sqrt{21}}{2} \leq a \leq \displaystyle\frac{3+\sqrt{21}}{2}\)

\(a\) は正の整数なので, \(a=1,2,3\)

これらの場合をそれぞれ調べることで, \((a,b,c)=(2,4,14)\)

補足

はじめに等式の両辺を \(abc\) で割ることで, 右辺の文字をなくしているのがポイントです。

最後に

今回は、方程式の整数解の問題を解説しました。

整数解問題で大切なことは、解の候補をいかにして有限個に減らすかです。

そのために今回学んだ手法は、次の2つでした。

  1. ( ) × ( ) = 整数 の形を作る
  2. 不等式で値の範囲を絞り込む

この2つの手法をマスターすれば、多くの整数解問題を解くことができるでしょう。

ちなみに高校数学のテキストでは、

(1) \(\displaystyle\frac{1}{a}+\displaystyle\frac{1}{b}=1\)

(3) \(\displaystyle\frac{1}{a}+\displaystyle\frac{1}{b}+\displaystyle\frac{1}{c}=1\)

の形で紹介されることの方が多いです。

では、また!

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