創作パズル 何もない論理パズル

はじめに

正直者や嘘つきがいて誰がどれであるかを推理するパズルは、昔から親しまれています。
登場人物を増やしたり,正直者でも嘘つきでもない者を加えたりすることで、これからも難しい問題や面白い問題がたくさん生まれてくることでしょう。

もちろん、彼らの発言が”正直”や”嘘”であることが肝なので、これらのパズルは彼らの発言の内容に注目して解いていくことになるはずです。
今回は、そんな常識を覆す問題を紹介します。

考えてみよう

問題

アキラ,カオル,サツキの中に、正しいことだけ言う正直者,正しくないことだけを言う嘘つき,何でも言える気まぐれが1人ずついます。
3人がそれぞれ何者であるか答えてください。

アキラの発言は当然な内容だったので、教えません。
カオルの発言は推理に必要なかったので、教えません。
サツキの発言だけ本来は教えるのですが、忘れました。

結局、具体的な発言の中身は何も教えてくれませんでしたが、こんな状態で解けるのでしょうか?

少し下にスクロールすると解答があります。














解答

アキラが正直者,カオルが嘘つき,サツキが気まぐれ

解説

アキラの発言は内容が当然なことだったので、正しい内容であり、しかも「私は正直者である」のようなものではなく「1+1=2」のようなものだったことがわかります。

「アキラが気まぐれ,カオルが正直者,サツキが嘘つき」がこのパズルの答えだったとすると、サツキの発言は気まぐれでも言えることから「アキラが正直者,カオルが嘘つき,サツキが気まぐれ」という答えの可能性もあるので、カオルの発言なしでこのパズルが解けることと矛盾します。
同様に、「アキラが気まぐれ,カオルが嘘つき,サツキが正直者」がこのパズルの答えだとしても矛盾が生まれます。

よって、アキラは正直者でなければなりません。

「アキラが正直者,カオルが気まぐれ,サツキが嘘つき」がこのパズルの答えだったとすると、サツキの発言は気まぐれでも言えることから「アキラが正直者,カオルが嘘つき,サツキが気まぐれ」という答えの可能性もあるので、カオルの発言なしでこのパズルが解けることと矛盾します。

よって、カオルは嘘つき,サツキは気まぐれでなければなりません。

また、アキラの発言が「1+1=2」,カオルの発言が「私は正直者である」,サツキの発言が「私は正直者ではない」であれば、カオルの発言なしで「アキラが正直者,カオルが嘘つき,サツキが気まぐれ」と、このパズルを解くことができます。

背景

嘘つきが出てくるパズルに慣れている人は、どのような発言には意味がなく無視でき,どのような発言には意味があり情報にできるか、を見分けることができるのではないでしょうか。
「私は正直者」のような発言は、登場人物の内訳に言及していそうですが、誰でも言えるので何の情報もありません。
むしろ、「1+1=2」のような当然な発言の方が、言った人が嘘つきではないという情報を持っています。

はじめに書いていたように、このようなパズルで基本的に使える手掛かりは登場人物の発言内容だけです。
しかし、発言内容が伏せられたこのパズルで手掛かりとなるのは「このパズルが解けること」です。
(このパズルはメタパズルの構造を持つので、下線の色で区別しておきます。)

このパズルが解けるような発言が本来は残っていたはず。
つまり、サツキの発言は強い情報を持つものでなければならず、そのような発言ができるサツキは何であるべきか……というように考察を進めることができるのです。
(解説では、天下り的に解答を証明するような方針で進めています。)

最後に

後に詳しく話すかもしれませんが、正直者と嘘つきは表面が違うだけで、中身はほとんど同じです。
このパズルでこの2人を区別するために、「当然な内容」という少し具体的な情報を出さざるをえなかったことが心残りです……

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