創作パズル パラドックスな定食

はじめに

商売というものは難しいと思います。
どんなものに人気があってよく売れるかを見極めるのが大変だからです。

値段の付け方にも工夫が必要です。
値段を安くすると利益は小さくなりますがたくさん売れますし、値段を高くすると利益は大きくなりますが少ししか売れません。

ただし、経済の世界はそんなに単純ではないようです。
例えば、次のパズルのような状況は本当に起きるでしょうか?

考えてみよう

問題

ある町には東西で食堂が2つあり、どちらも昼の定食を1種類ずつ売っています。
町人は100人いて毎日どちらかの食堂で昼食をとりますが、美味しい東食堂の定食をできるだけ多く食べたいようです。

味がダメなら値段で勝負しようと考え、西食堂は定食の値段を変えてみました。
いつもより100円値下げした週は、何故かいつもより100食少なくしか売れませんでした。
いつもの半額に値下げした週は、何故かいつもの半分しか売れませんでした。
いつもより何円か値上げした週は、何故かいつもより100食多く売れました。

町人が1週間の昼食にかける費用がみんな同じで一定だったとき、西食堂の不思議な定食のいつもの値段を答えてください。

値段を安くしたら売れなくなり、高くしたら売れるようになる……?
値段を計算する以前に、そもそも矛盾しているのでは?

真相は、解いてみればわかりますよ!

少し下にスクロールすると解答があります。














解答

600円

解説

いつもの西の定食の値段を\(w\)円,東の定食の値段を\(e\)円,町人がいつも1週間に西の定食を\(W\)回食べているとします。
各町人が1週間の昼食にかける費用は次で表されます。…①

$$Ww+(7-W)e$$

西の定食を100円値下げした週に各町人が西の定食を1回少なく食べたという条件から、その週の昼食費は次で表されます。…②

$$(W-1)(w-100)+(7-(W-1))e$$

西の定食を半額に値下げした週に各町人が西の定食を半分の回数食べたという条件から、その週の昼食費は次で表されます。…③

$$\frac{1}{2}W\times\frac{1}{2}w+(7-\frac{1}{2}W)e$$

西の定食が値上げされたときの値段を\(w’\)円とすると、その週に各町人が西の定食を1回ずつ多く食べたという条件から、その週の昼食費は次で表されます。…④

$$(W+1)w’+(7-(W+1))e$$

①と③が等しいことから、\(w=\frac{2}{3}e\)…⑤がわかります。

①と②が等しいことから、⑤を用いて\(e=300W-300\)…⑥がわかります。

①と④が等しいことから、⑤と⑥を用いて次がわかります。

$$w’=\frac{100(2w+3)(w-1)}{w+1}$$

各町人が1週間に西の定食を食べる回数は、\(W\)回から1回減ったり,半分になったり,1回増えたりするので、\(W\)は2か4か6でなければいけません。
\(W\)の値に対して、\(w’\)はそれぞれ\(\frac{700}{3}\),\(660\),\(\frac{7500}{7}\)となり、値段として適切な\(660\)でなければいけません。

また、\(w’=660\),\(w=4\),\(e=900\),\(w=600\)であればすべての条件を満たします。

背景

問題を解くとわかるように、値段と需要の関係が逆転してしまうような状況がありました。
この謎は、値段が下がった物がどんな理由でたくさん売れるようになるのか考えると解決します。

値段の減少は需要を変動させる2種類の効果を主に与えます。

  1. 西の定食が安くなると、値段あたりのサービスがよくなるので人気が上がります。
    これは西の定食の需要を増やす力を持ち、このような効果を代替効果といいます。
    しかし、問題文にある通り問題の中では東の定食の人気にはまだ敵いません。
  2. 西の定食が安くなると、町人の予算はいつもの組み合わせだと余ることになります。
    余った予算はよりよい定食にグレードアップさせることに費やされます。
    これは西の定食の需要を減らす力を持ち、このような効果を所得効果といいます。

これらの効果が勝負した結果、今回の状況では解説で具体的に計算された通り、値段の減少が需要を減らすことになりました。

このような不思議に見える現象は、Giffen(ギッフェン)のパラドックスと呼ばれています。
「ある財の所得効果が代替効果を上回ることで、価格の下落が需要量を減少させることがある」ということを言っています。

参考リンク Wikipedia ギッフェン財

この論理パズルは、Giffenのパラドックスが起きているという条件から具体例を特定するという造りになっています。
条件文に現れる原因と結果の増減量を対称的にして、「Giffenのパラドックスといえばコレ」と言われるパズルを目指しました。

最後に

ここの論理パズルは量より質で勝負していきますよ!

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